重症筋無力症(MG)について

全身型重症筋無力症
(gMG)の治療

監修: 総合花巻病院 脳神経内科 部長 長根百合子 先生

治療目標は?

自分がどのように過ごしたいか、治療の目標は個々の患者さんによって異なりますが、日本の診療ガイドラインでは、MGの症状が日常生活や仕事に支障がないレベルで、治療による副作用・負担が最小限である状態を治療目標としています。
MGは完治が難しい病気ですが、適切な治療によりおよそ半数の患者さんが日常生活に支障がない状態を達成しています。
MGでは、健康関連QOL(生活の質)やメンタルヘルスを良好に保ちながら治療を続けることも大切です。

自分がどのように過ごしたいか治療目標を担当医師と共有することは、ご自身に適した治療を受けるためにとても大切です。
何ができるようになりたいか、どの治療を選択するか、ご自身の希望を伝え、担当医師とよく話し合いましょう。

治療目標は? 治療目標は?

日本神経学会監修: 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 南江堂, 2022

MGが起こるしくみと代表的な治療法1-3)

MGが起こるしくみの各段階に対して、さまざまな治療法があります。
自己抗体の種類、症状、重症度などによって選択される治療法が異なります。
また、複数の治療薬を併用することもあります。

MGが起こるしくみと代表的な治療法

MGが起こるしくみと代表的な治療法

経口ステロイド

体の中の炎症や自己抗体を含む過剰な免疫反応を抑える薬です。
MG治療で最も一般的な治療薬として使用されます。

コリンエステラーゼ阻害薬

AChを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害して、AChの作用を高めます。

コリンエステラーゼ阻害薬

コリンエステラーゼ阻害薬

免疫抑制薬

免疫に関係する血液中のT細胞などのリンパ球のはたらきを阻害し、過剰な免疫反応を抑えます。

ステロイドパルス療法

ステロイドを点滴により、短期間に多量に投与する治療法です。
短期に症状を改善する治療法の一つです。

ステロイドパルス療法 ステロイドパルス療法

免疫グロブリン静注療法(IVIg療法)

免疫グロブリンを中心に精製した製剤を、5日間連続で点滴します。
免疫のバランスを整え、自己抗体のはたらきを抑えます。

血漿浄化療法

特殊な装置を使い、血液から自己抗体などを取り除く治療法です。

血漿浄化療法 血漿浄化療法

胸腺摘除術

胸腺に異常(胸腺腫、過形成胸腺)がある患者さんで、腫瘍や胸腺を取り除く手術が検討されます(注:摘除しても抗ACh受容体抗体価は下がりません)。
胸腺は免疫細胞の分化、成熟に関与しますが、成人では取り除いても免疫機能への影響は少ないとされています。

  • ※過形成胸腺:全身型抗ACh受容体抗体陽性の早期発症MGに多い。

FcRn阻害薬

通常IgGは新生児型Fc受容体(FcRn)によってリサイクルされます。
FcRn阻害薬は、FcRnに結合することで、IgGのリサイクルを抑え、血液中の病原性自己抗体を含むIgGの量を減少させると考えられます2)
自己抗体のタイプに関わらず使用でき、投与方法や投与間隔の異なる複数の薬があります。

FcRn阻害薬

FcRn阻害薬

Seth NP, et al. MAbs. 2025;17:2461191. より作成

補体阻害薬

抗ACh受容体抗体陽性のMGでは、免疫システムの一つである補体によって、神経と筋肉のつなぎ目の筋肉側の組織が破壊されます3)
補体阻害薬は、補体のはたらきを阻害することにより、組織が破壊されるのを防ぎます。
抗ACh受容体抗体陽性の患者さんが使用でき、投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種する必要があります。

FcRn阻害薬

FcRn阻害薬

Kaminski HJ, et al. J Clin Invest. 2024;134:e179742. より作成

  • 1)日本神経学会監修: 重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 南江堂, 2022
  • 2)Seth NP, et al. MAbs. 2025;17:2461191.
  • 3)Kaminski HJ, et al. J Clin Invest. 2024;134:e179742.
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